7/31に金曜ロードショーで放送される『聲の形』は2016年公開の京都アニメーション制作のアニメ映画です。
この作品は週刊少年マガジンで連載されていた大今良時の漫画『聲の形』を原作としているのですが、映画化するにあたって幾つかのエピソードが省略されています。中でも原作5巻の内容の約半分を占める皆で映画作りをするというエピソードが省略されています。その結果、ここで原作では掘り下げられていた真柴智というキャラクターを映画では掘り下げることができず、主人公石田をして喧嘩の際には部外者呼ばわりするなど原作ほど踏み込んだ関係性ではないように描かれています。
今回は映画では詳しく語られなかった映画作りのエピソードと原作ではそれに伴って掘り下げられている真柴智のキャラクターをご紹介します。
映画と原作の時系列
映画では皆で遊園地に行った後、石田の過去のいじめについて揉めたことで喧嘩になったのち、西宮家の祖母が亡くなる展開でしたが、原作では遊園地に行ってからの時系列が異なっています。
原作の時系列では西宮家の祖母が亡くなる→皆で映画作りをする→いじめの問題で喧嘩が起きるといった順に話が進んでいきます。映画ではこの映画作りのエピソードはそもそも省略されています。
映画作り
映画作りの展開は永塚が学校に映画の冒頭部分案を漫画にしてもってくることから始まります。
放課後、石田の家で計画を練り直して、永塚が監督、真柴が役者、川井が脚本、植野佐原が衣装、石田が助監督になります。
始めは西宮はメンバーに数えられていませんでしたが、西宮にも参加してほしいと思った石田が皆に訴え、西宮もメンバーに加えることになります。
ロケとして小学校を使うことになったので、石田は西宮、真柴と共にアポイントを取るために石田の母校を訪れることになります。買い出しを西宮にお願いして小学校に向かう道中、真柴は荷物持たせをしている小学生たちに遭遇し、いじめられていた女の子を助け、自分も昔いじめられる側だったことを石田に打ち明けます。
小学校では石田の元担任竹内と話すことになりますが、竹内が西宮がいじめられていたことに対していじめていた側を擁護するような発言をしたことに怒った真柴は竹内にペットボトルの水をかけてしまい、小学校でのロケの許可は得られなくなってしまいます。合流した西宮と石田が手話で話しているのを見て、竹内が手話での会話を読み取っていることから、竹内も西宮転校以降に手話を勉強していたことが暗に描かれます。
その後は映画同様、真柴に西宮の過去について聞かれた石田が疑心暗鬼になり川井に詰め寄ることで喧嘩へと発展していきます。原作では真柴がいじめを絶対に許さないキャラクターとして描かれているので、石田の自分が責められていると一層追い込まれたために疑心暗鬼になったことが描かれています。
真柴智の過去
真柴は小学校のころ、同級生に眉毛が太いことでいじめられていました。そのいじめをしていた同級生たちが幸せに子供を作っているのを知った真柴は、担任として同級生の子供がどう育ちどんな過ちを犯すのかをただ見るために教師になろうと考えます。眉毛のことでも「普通」でありたかった真柴は、そんな自分が「普通」ではないのではないかと感じ、自分が「普通」であることを実感するために橋から飛び降りた石田に初めは近づいてきたのでした。しかし、石田たちと関わっていく中で自分が愚かに思えた真柴は、石田が入院中に映画作りを再開するにあたって竹内のもとを訪れ、先日の非礼を詫びあらためて小学校をロケに使わせてほしいと頭を下げたのでした。
真柴の対話拒否
聲の形のテーマとして音声発話に限らず対話(コミュニケーション)をキーとしていることが作品全体から読み取ることができます。人の顔を見ることができない石田、自分から謝罪をすることで対話をしない西宮、自分の話を押し付ける永束、人からどう思われてるかに気が付いても自分を守るためにそのことに目を瞑る川井といった具合に作中に登場する多くのキャラクターがコミュニケーションに問題点を抱えています。
真柴も例外ではなく、石田と皆の橋での喧嘩の際には石田を殴ったことで何様だと問う結絃に対して「他人様」と言い放ちます。ここから真柴は他人と自分の間に壁を設けることで対話の拒否を行うキャラクターであることが読み取れます。
いかがでしたか?漫画「聲の形」ではこのほかにも、映画ではあまり語られなかった川井や佐原といったキャラクターひとりひとりの内面もそれぞれの視点で描かれています。管理人は映画館で見て感動し、翌日漫画をまとめ買いして作品のファンになりました。
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